一太郎30周年記念スペシャルサイト

一太郎ユーザーインタビュー&開発者懇親会

お客様のために。引き継がれるスピリット

一太郎開発責任者 吉住康弘

編集部(以下、編)「一太郎2015」の開発に当たって、開発部の方々が福良社長とディスカッションをされたと聞いていますが、どんなお話をされたのですか?

吉住初期の一太郎開発の様子や、当時の開発者の思いについて伺いました。昔は会社も小さかったので、身近でお客様からのお褒めやお叱りの言葉をいただきながら、「お客様を喜ばせたい」という一心でやってこられたと仰っていました。社長からは、「とにかくお客様のために」という気持ちを人一倍強く感じました。

井上昔の話ですが、社長が開発を統括されていたころの一太郎で、開発途中に、機能を詰め込みすぎて動作が重くなったことがありました。手を尽くした末に「これ以上は、改善できそうにないですね」と社長に言ったら、社長は「いや、もっとこんな方法もあるじゃないか」とさらに検討をされるんです。「なんとしても使い勝手を向上させたい」という執念が伝わってきました。

当社の製品開発では、例えばダイアログの細かな点についても、時間をかけて徹底的に検討する場合がありますよね。そういうところに、社長のスピリットが引き継がれているんだなと思います。

そうですね。私も、社長の話を通してお客様の感覚を直に感じることができたので、「お客様のために」という思いをこれまで以上に強く持って取り組むことができました。

一太郎企画責任者 岡 美香

お客さまのご意見は、一太郎の開発にどのように活かされているのでしょうか。

吉住一太郎2015では、実際にお客様のご意見をきっかけに多くのアイデアを検討し、「操作」や「印刷」など7つのカテゴリにわたる「30項目の快適化」を実現しています。過去のバージョンアップで残念ながら実現を見送った項目等を含め、今回は直接お応えできたところが多いと感じています。

>世界初!EPUB3.0.1対応と、30周年限定の記念アプリ

EPUB対応も進化しましたね。

渡辺はい。今回、ワープロソフトとしては世界で初めて「EPUB3.0.1」に対応させました。EPUB仕様にしたがっているにもかかわらず、ビューアによって見え方が違うなど、端末に依存した問題の報告もあったので、それらへの対応を徹底して行いました。出力精度はかなり向上しているので、ぜひ使ってみていただきたいですね。。

30周年記念アプリ」も注目です。「らくらく!画面カッター」と「はかどる!数式メーカー」、これら2つのアプリの魅力を、各担当者から聞かせてもらえますか。

古野らくらく!画面カッター」は、一太郎で文書を作るときに彩りを添えるものとして、手軽に画面を切り取って加工できるツールを目指しました。四角の画像をただ貼り付けるよりも、丸く切り抜いた画像を貼り付けた方が、文書全体のデザインがぐっと良くなることもあると思います。そんなとき、気軽に使っていただければ嬉しいですね。

井上はかどる!数式メーカー」は、数式を簡単に書けるツールです。特に、学生さんや教師の方に使いやすいよう心がけました。デザイナーにもアイデアを出してもらって「パッと見た目がとっつきやすい」ことを目指して作りました。

簡単な数式でも、パソコンで書こうと思うと難しいですからね。筆算の割り算など、意外とどうやって書いたらいいか思いつかなかったり。そういった数式がとても楽に書けるので、便利に使っていただけるかなと思います。

一太郎2015 スーパープレミアム 30周年記念パックとプレミアムに搭載の「花子2015」は、どのような進化を遂げているのでしょうか?

今回は「バラエティ用紙」という新機能がイチ押しです。この機能ひとつでグラフ用紙やパースグリッドなどいろいろなものを作れるので、花子の活用の幅が広がると思いますよ。

吉住あとイラスト部品の増加にも注目していただきたいですね。従来のバージョンアップに比べて部品を2倍以上追加し、20,000点以上としました。数が多い分、例年より早くから追加する部品の内容を考えて、ほぼ1年中メモっていました(笑)。

追加のイラスト部品はどんな内容ですか?

吉住幅広く、トレンドも意識して追加しました。IT機器やニュースになったもの、教育関連もいつも通り力を入れています。

スーパープレミアム 30周年記念パックには「30周年記念イラスト部品ガイド20,000」も付属しますね。

吉住20,000点以上ある全てのイラスト部品を、手元で閲覧できる便利な冊子です。花子の「部品一覧」と同じ順番でイラストを並べているので目的のイラストを探しやすいですし、20,000点はかなりの数なので、いろいろなイラストを眺めるだけでも楽しめると思います。

書体への愛情…フォントパック秘話

30周年記念フォントパック」は、5社のフォントメーカー様からフォントをご提供いただいていて豪華ですね。

プレミアム/スーパープレミアム 企画責任者 佐々木孝治

佐々木実は、多くの関係者に「5社協賛なんて実現できるの?」と心配されていました。ありがたいことに、企画を説明させていただいたメーカー様の反応がよかったので、一太郎のお客様向けにいろいろな書体をご提案いただくことができました。

UDフォント(*1) を豊富に搭載していますが、これはどういった流れで決まったのですか?

佐々木一太郎2015のテーマが「快適化」だと各メーカー様にお伝えしたところ、UDフォント搭載のご提案を多くいただいたんです。UDフォントは視認性がよく、快適化というテーマにぴったりなので、最終的に11書体のうち5書体がUDフォントというラインナップになりました。

UDフォントを押さえつつ、バリエーションに富んだラインナップですね。行書体が搭載されるのも、最近の一太郎では珍しいですよね。

佐々木変化を付けようと思ったんです。まず4社様から、きれいな明朝体やゴシック体をご提供いただくことが決まったので、タイプバンク様からご提案いただいた「UDタイポス」と「流飄行書」をアクセントにして、バラエティ感あふれる感じを出せればなと。

調整のためにメーカー様へ出向くことも多かったようですが、終えてみてどうですか?

佐々木各メーカー様のビジネスポリシーを尊重しつつ、1つのフォントパックとしてまとめるのはひと苦労でしたが、その分とても良いフォントを搭載できたと自負しています。高品質なフォントを制作している、こだわりのあるメーカー様ばかりだったので、商談の端々に“フォント愛”を感じられたのが印象的でした。

*1 UDフォントとは、性別や年齢、障害の有無に関わらず、誰にも「分かりやすく」「読みやすく」「間違えにくい」などの特徴があり、大変幅広い用途に使用できるフォント。

「何か違う…!」開発者を悩ませた社長のこだわり

30周年記念パックの中でも特に注目されているのが「一太郎dash 30th」ですね。一太郎dashというと懐かしさを感じるお客様も多いかと思いますが、こだわりはどんな点ですか?

澤田レトロチックな演出ですね。見た目上で走査線も再現しているんです。表示・非表示を選択できるのですが、試作版を社長にお見せしたところ、「走査線がオフだとキツく見えるね」と言っていました。「走査線オンの方がマイルドでいい」と。

宮本そういう狙いでしたっけ?

澤田違いますけどね(笑)。懐かしさを楽しんでもらいたい機能です。

吉住「一太郎dash 30th」でも、社長はすごくこだわりをお持ちでしたね。タイトルバーの色も、わざと " ツブツブ ″ にしたり。

澤田そうなんです。最初は、過去の「一太郎dash」の資料を見ながら、同じに見える色を探して設定していたんですけど、社長が見て「何か違う…!」と。

一同(笑)

澤田「同じ色のはずだけど何が違うのかなぁ」と開発部メンバーに相談していたら、「昔は数色のドットを組み合わせて、さまざまな色を表現していた」と気付いて。それで、ツブツブにして社長に見せたら、「ウンウン、これだ!」と、言ってもらえたんです(笑)。

一太郎dash UIチーム 新田秀樹

吉住昔のパソコンは色数が少なかったし、画像の解像度も低かったから、その表現方法でないと、違和感があったんでしょう。

澤田確かに微妙に違うんですよね。あとは、ブラウン管を模したフレーム。デザイナーのアイデアなんですが、最初に聞いたときは、「そこまでするか!」と吹き出しました(笑)。本当に冗談だと思っていたんですが、こうやったらできるかなぁと考えてやってみたら、「お?悪くないんじゃないか?」と思ってきて、結局採用になったんです。

吉住デザイナーとの話合いでは、いろいろなアイデアが出てきましたね。5インチフロッピー風ケースもそうでした。当時の一太郎の雰囲気は再現できましたかね?

新田そうですね。ケースも画面も、当時に近いものができたと思います。

吉住最近はMS-DOSの時代を知っている人も減っているし、若い人には「黒画面に白文字」が新鮮に映るかもしれないですね。

新田「黒−シンプル」画面は、若手のデザイナーが見て「かっこいい」と言っていたので、ある意味新鮮なかっこよさがあるのかもしれません。あれはいいですよ。イチ押しはデフォルトの水色と緑の画面ですけど、私は「黒−シンプル」で使おうと思っています。

澤田実用上も、画面がシンプルなのはいいですね。自分も試用を兼ねて「一太郎dash 30th」を使っていますが、書くことに集中できる点では、本家の一太郎よりもdashが上だと思っています。

吉住大きく出ましたね(笑)。

澤田はい。自信を持ってお勧めできます。

絵が描けなくても大丈夫。この楽しさを味わって!

30周年記念パックとして忘れてはいけないのは「一太郎モデル Intuos pen & touch(以下『インテュオス』)」ですね。正直、思い切ったチョイスだと思いました。

佐々木30周年に相応しく、お客様に楽しんでもらえるアイテムは何か、と検討を重ね、「これぞ!」と決めた逸品です。

ペンタブレットというと「絵を描くためのもの」というイメージで、私のような絵心のない人間は「使いこなせそうにない…」と尻込みしてしまいます。

佐々木心配いりませんよ。確かに、私自身も最初は「敷居が高いのでは」という印象だったのですが、ネットなどで非常に評判が良い商品だったので、試しに使ってみたんです。もちろん何もないところから絵を描くのは多少なりとも絵心が必要ですが、写真やイラスト画像などを下絵にしてなぞっていけるので、思いのほか簡単にクオリティの高い絵が描けるんですよ。

そうなんですね。

一太郎 コアチーム 宮本隆二

佐々木あとは、一太郎のお客様により気軽に使っていただくにはどうしたらよいかを考えて、「一太郎特製イラスト素材」をダウンロード提供することにしました。絵に馴染みのない方でも、ちょっと色を塗ったり文字を入れたりするだけで味わいのあるイラストが作れる素材なので、一太郎文書の挿し絵や、絵手紙を簡単に作れるんです。ぜひこの楽しさを味わっていただきたいですね。

宮本ちなみに、僕はインテュオスをマウス代わりに使っていますけど、結構使いやすいですよ。

佐々木なるほど。インテュオスのタブレット面は、モニターの表示と1:1の関係になるので、慣れればマウス同様、汎用的なパソコン操作に使うのも便利かもしれないですね。

インテュオスや一太郎dash 30thなど、今回の30周年記念パックで一太郎の可能性がますます広がりそうですね。皆さんのお話を聞いて、一太郎2015をお客様に使っていただける日がすごく楽しみになってきました。本日はありがとうございました。

■取材後記

和気あいあいとした雰囲気で進んだインタビューでしたが、時に議論を戦わせ、切磋琢磨しながら仕事をしている彼らの関係性からは、時折“真剣勝負”の心地よい緊張感と活気が感じられました。開発を終えた疲れも見せず、「より良いもの」を想像しては、楽しくてワクワクし続けているようなメンバーたち。輝く彼らのまなざしは、すでに「2015の次の一太郎」の姿を、思い描いているようにも見えました。